レビュー:VA-11 Hall-A

退廃的な雰囲気に惹かれてプレイを始めた。

そこまで自堕落な生活を送っている方でもないが、それが退廃に惹かれる理由なんだろう。実際に退廃するとあまり良いことはない。ファッション退廃-istだ。

元々お酒が好きということもあってか、同種のゲームの中でもひときわ興味を惹かれたのだろうと思う。ゲームを始める時のメッセージも好きだ。これだけで良い気分になるので、作者は人心をよくわかっている。プレイからだいぶ経ったが、今でもカクテルといえば VA-11 Hall-A を連想する。

雰囲気

あらゆる犯罪が蔓延する街で、カクテルを提供する。気がつけば街の暗部から目を背けられなくなっている……

主人公のジルは金欠に喘ぐバーテンダーだ。だが精神までは窮しない。格好良い。愛猫のフォアと会話?したり、部屋を飾り付けて自分の機嫌を取ることもする。まともな大人である。

来店するお客さんたちは、一癖ある……という言葉では形容しきれない個性、バックグラウンド、思想、嗜好の持ち主だ。にも関わらずそれぞれが破綻せず、自身の信念に従って生きている。格好良い。そんな彼らが交錯していく様子もたまらなく魅力的だ。

これはゲームだが、作者の出身国であるベネズエラの過酷な現実と無関係ではない。気になる方は、是非作者インタビューを読んでみてほしい。それでもなお力強く生きていこうとする人々が、どこかで現実と交わっているように感じられると思う。(難しい問題だが、作者はそう受け止められることも加味していると思う)

ゲームプレイ

お客さんの話を聞いて、欲しているカクテルを提供する。カクテル名を言ってくれることもあるが、気分しか伝えてくれないこともある。それぞれの好みはしっかりメモを取っていくべきだろう。

要求はだんだん難しくなっていくので、目を皿にしてレシピを読むことになる。

ドリンクを作ること自体は分かれば難しくない。タイミングもゆるゆるで、これは話が主体のゲームなんだなと感じさせる。

翻訳

翻訳の良さにも触れておくべきだろう。これ日本人が作りましたよね? と思い込んでしまうほどの翻訳で、詩的な美しさや心を刺す表現に打ちのめされる経験が待っている。学生時代は遠くなったが人生はまだ長い、そんな大人に刺さるのではないだろうか。

作者が日本文化を好きでいてくれていることを考えると、良い翻訳者さんに巡り会えたことは我々日本人にとってもありがたいことだ。

世界観を見事に表した音楽と、人々、カクテル、そして街の魅力が人生を彩ってくれる。自分の中に深く根を下ろした一作だ。

さあ、一日を変え、一生を変えるカクテルを!

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2026年3月19日